思い切り叫んだ。

小さく照らす空にオレの声が響く。


「……太一さん?」


 カラカラとあわただしく下駄の音が近づいてきて、ようやく整ってきた息をしまいこんだ。


 しゃがみこんでしまったオレの前にやってきたチビ助は、膝を折って心配そうに覗き込んでくる。


「すっごい汗ですよっ、これ…」


 浴衣と同じ柄の巾着から小さなハンカチを差し出してきた。

はあ、はあ、と息を整えるのに必死で視界がぼやけていた。


 ただその声に、オレは反応していたんだ。


その手を思い切り引っ張ると、チビ助の小さな体は簡単につんのめる。


オレはそれをしっかり抱きとめた。


「た、たたた、太一さんっ!?」


 やんわりとしたそのクセ毛がオレの頬にあたって、くすぐったい。

それでも夢中で腕に閉じ込めた。


 その向こうにいた雛太くんは、目を見開いてたじろいでいた。


 怜や杏ちゃんの言葉が、今のオレを駆り立てた。



 もう、後戻りなんかできやしない。


さらにぎゅっとチビ助にまわす腕の力を強める。