「未来のこと…」


 ようやく階段の向こうに、夏の夜空が見えた。

キラリと光る星が、応援してくれてるみたいだ。


 あと少し。


 おもむろに肩でする息も必死に飲み込んで、ようやく最後の一段を踏み込んだ瞬間だ。




「未来が、ずっと好きだった」



 飛び込んできた赤い顔の雛太くん。

少し離れて、それをじぃっと見つめているチビ助。


「…ひ、ひな…?」


 小さな震える声。


 ああ、やばい。

あいつが困って泣いちゃう。



 そう思っても、足がすでに力を失って今にもへたり込みそうだ。

息が苦しくって、うまく目も開かない。


 一歩ずつ雛太くんがチビ助に近づく。


 ちくしょう、体が動かない…っ!


 思わず手を突いて、その場に座り込んでしまった。

それでも距離を縮める目の前の二人に、動けなくなっていた。


「…らい…っ」


 振り絞る声に、二人の動きがピタっととまる。



「未来っ!」