「なにが?」

 オレが聞き返すと、わたあめにかぶりつきながら、その大きな瞳をちらりと投げた。


 この前会ったときはポニーテールにしていたその髪も、1つにおだんご状にまとめていた。

藤色の浴衣のチビ助にくらべて、ひまわりのようなその浴衣は彼女の笑顔とよく似合う。


「オトナの余裕ですか?」

 少し皮肉っぽく聞かれる彼女の言葉に、何が言いたいのか察しはついた。



「……違うよ」

 髪形を崩さないように、その頭を撫でた。



 オレに余裕なんてないってことは分っていた。

だけど…こんな人生に大切なときに余計なことを考えさせたくない。


 そんなオレは、遠巻きにチビ助をオレの腕のなかに閉じ込めるしか、手段はないんだ。



「太一さぁ~んっ」


 チビ助はその手にある赤い果実の水あめを頬張って振り向いた。

いつもより光って見えるその笑顔は、このライトのせいだって思うようにしてた。


 再び小走りに近寄るチビ助は相変わらず小さくて、また人ごみに飲まれかけていた。


「じゃんけん勝っ…」


 言いかけたところで、チビ助はつんのめりになった。

後ろの雛太くんは片手にさっき追加でもらった水あめ。


 一瞬にして、あっと驚いた顔になっていた。



「あぶな…っ!!」