顔がぐんぐん熱くなって、慌てて広げた教科書の文字を追いかけた。


「ちょっと、キョン。聞いてないんだけど!」

 左からは不満そうな雛太の声。



 そうだった、雛太にはいってなかったんだ。

だけど右隣の杏ちゃんは「そうだったっけ~?」とはぐらかしていた。

明らかに確信犯のクセに。


 きっと雛太がまた怒っちゃったりするんだ。


そんな不安であたしはため息をついたけど、それを破ったのは太一さん。


「じゃあ、3人の勉強見ようか?」

 カウンターから身を乗り出して、あの卑怯なくらいの甘い笑顔。

予想通り、雛太はキッと睨みあげていた。


 しばらく沈黙の後、小さく呟いた。





「…お手並み、拝見します」






 少し変わった……雛太と太一さんの距離。