「…そ、そんなこといわれても…」

 あたしのしどろもどろの答えに、腰に手を当てて呆れていた。

 そんな大事なのかな?


 ざわつく廊下をすりぬけて、よく響く階段を登っていた。

「あのハチミツレモンにとられちゃうよ!?」

 杏ちゃんがいってるのは、多分サトさん。

いつも目が合う程度でしかないけど。



「でも、さ」

 あの太一さんの試合の日を思い出す。


「なんで、太一さんはハチミツレモンじゃなくてクッキーを選んだのかな?」


 あたしのココ最近の疑問だった。

数学の方程式より、英語の文法より、ものすごく難しい問題。



「そこなのよね~」


 そういって指を顎にかける仕草で、一緒に考え込んでた。

二人でうーん、と唸りながらすでに教室の前に着いていた。



 ぱっと顔をあげた杏ちゃんは、すこし不思議そうにあたしを覗き込んでくる。




「太一さんも未来が好き、とか?」




 ミンミン外でなっているセミの声が、あたしの足を止めた。