時は7月。


 半袖が冷たい風を待つかのようになびいた。

セミの鳴き声が、どうにも体の力を奪っていくみたい。

合唱コンクールにでたら金賞ものだ。


 あぁ、脳みそが暑さにやられたのかな?


「未来ーっ!」

 背後から聞こえてきた杏ちゃんの声に振り向いた。

がばっと抱きついてきたので慌てて受け止める。

「おはよう」

 あたしたちは笑顔で挨拶を交わす。

「あれ、雛太は?」

「日直だってー」

 杏ちゃんと雛太は家がおとなりさんだからいつも一緒に登校してくる。

少し家が離れたあたしは通学路でいつも合流してた。


 あたしたちは木陰を縫うように通学路を歩く。


「部活終わっちゃったねー」

「うん、なんだか拍子抜け」

 クスリと笑う杏ちゃん。


 二人は今月にはいってすぐに引退試合をむかえた。

今年は運よく会場がうちの学校で、おかげであたしは体育館と校庭のいったりきたりだった。


「あーあ、これから勉強だらけだぁ」

 杏ちゃんの力の抜けた声に、あたしは苦笑い。

なにせ三年生になってからあたしには専属の先生がいるわけで。

苦じゃないって言ったら嘘になるけど、楽しくないってわけじゃない。


 動機が不純だけど。