フォーチュンクッキー

 怜の言葉は直球だ。

だから余計に答えづらい。


「オレもわかんねぇ」


 正直に答えてみたものの。

息を吐き出しながら、まとまらない思考がひたすらリピートされていた。



「好きじゃないの?」


 意外そうに聞き返してきた怜。

オレは捲し立てるように語気を強めてしまっていた。


「中学生だぜ?それに…もし付き合ってみろよ。あのチビ助とキスすんだろ?」


 ってオレ何いってんだよ。

恥ずかしすぎてずり下がると、頭を抱えてしゃがみこんだ。



 さっきから同じ事の繰り返しだ。

もう悩むのも疲れたよ。



「太一って勉強だけはできるのにな?」

 可笑しそうにいう怜に、今のオレは情けなくも同感だ。


 キコキコと回転する椅子の音は、耳障りなはずなのに、今だけは気持ちを落ち着かせる。




「イイコト、教えてやるよ」


 怜の言葉にオレは顔をあげた。

そこには太陽の光を背中にうけて、むしろ太陽そのものにすら見える怜の笑顔。


「『だって』とか『だから』とか外したキモチがお前の気持ちだよ」


 親指でトントンと自分の熱い胸を突いていた。


 その言葉はオレの体を貫くように響く。



 吸い込まれるような怜の強いまなざし。