「もう少し好きでいさせてね?」
ちょっとだけ、瞳が揺れていた。
抱きしめたい衝動に駆られて腕を伸ばしかけたけど、サトがゆっくり首を横に振る。
そんなことしたら、サトだって怜だって、今度こそ失うんだ。
「次は…、ううん、あの子とはきちんと向き合うんだよ?」
ひとつに結ってるサトの髪がぴょこんと跳ねた。
これから訪れる夏空のように、その表情は澄みきっていてオレは何も言えなくなった。
そうそう、と付け足すようにくすくすと笑いだすサト。
「あの子ってば、『死なないでー!』って泣き叫んでたわよ?」
ああ、なんとなく様子が目に浮かぶよ。
想像しただけで笑いがこみあげる。
「顧問に誰?ってきかれてなんて答えたと思う?」
さらに続けられた言葉。
チビ助は予想外なやつだから、わかるわけない。
「『妹です!』だって」
きっと真っ赤な顔で絶対ごもったはずだ。
思わず声をあげて笑い出してしまった。
もう、最高だよ。


