ちょっと音量を間違えて、回りの人にくすくす笑われた。

さすがの杏ちゃんも苦笑いだ。


 太一さんもビックリして振り返った。


 恥ずかしすぎる。

思わず両手で顔を隠したけど、視線はなかなか外れてくれず。


 触れた手のひらが伝える、顔の温度。

熱いのがよくわかった。



 指の隙間からこっそり太一さんを見たら、口の動きだけで何か言っていた。



 あ、ほ。


「…ですよね」


 誤魔化すかのようにわたしはヘラって笑うと、コートに走っていた太一さんの後姿を見送った。