「ちょ、雛太!?」

 杏ちゃんが追いかけようとすると背中を向けたままご立腹の声が響いた。


「トイレいってくる!」

 太一さんはさらに大笑いしてた。


 一体、なんなんだろう……?


 ぽかんとしてるあたしに太一さんは向き直って、笑い涙をぬぐってた。

そんなになるまで可笑しいことがあるのかな?


「そうだ、チビ助。アレは?」


 ……あれ、って…もしかして…?


 ガサガサとかばんを探って、あたしの思い当たるアレを差し出した。


 小さな花柄の紙袋。


「サンキュ」

 そういって中から一枚取り出したクッキー。

パリっと噛み砕いて、綺麗に紙切れを抜き取った。



「太一っ」

 怜さんの呼ぶ声に、太一さんは小さなその紙をくしゃっと握りしめた。


「じゃあ、行ってくるから」


 ……ああ、まただ。

そんな優しく笑うから鼓動が早くなっちゃった。



 駆け出した太一さんに、ようやくあたしは声を振り絞った。



「が、がんばってください!」