カウンターにいるマスターの向かいに座る太一さんの隣には、いつか彼が着ていた制服と同じの男の人。


 あたしがいくら小さくたってわかる。

太一さんだって背は高い方なのに、その人はもっと大きかった。

背中も、その丈も。


「“先生”も大変だね〜」

 え…?

 冷やかすようにその人は笑って太一さんの肩を叩いてた。



先生が大変なの?あたしが生徒だから?



声にならない疑問が頭を次々と支配していく。


 外はじっとりと湿気を帯びてきて、今にも夕立が降りだしそうだった。


「未来ー?」


 杏ちゃんが後ろから声をかけてきた。


 それが店内にも届いてしまって、最初に気付いたのはマスターだった。


「あ、未来ちゃん」

 それに反応して背中を向けていた二人が振り返った。



 太一さんはどうした?って、何もなかったように笑う。


天国から一気に地獄をみた気分だ。


 やっぱりあたしはただの迷惑なだけだったのか。


ぐるぐると回るのは不安しかなくって、気付いたらぷるぷると拳が震えてた。