「なーんだ、こんなに近いんだ」

 あたしは杏ちゃんと喫茶店に向かってる。


 太一さんに…、こ、恋してるってわかったけど。

なんだか胸がくすぐったい。


だけどこんなにも会いたいって思う気持ちの正体は、同時にあったかかった。



 そんな太一さんに杏ちゃんは「もう一度会わせて!」と、部活の定休日である今日ムリヤリついてきた。


 商店街を抜けて、見慣れた看板が見えた。

 足取りはステップが踏めそうなくらいで、杏ちゃんが一緒なことすら忘れてしまいそう。


 いつもの音を立てて扉を開けた。

「こんに…」

 あたしが言いかけた。


 水色のシャツが2つと、白いシャツが1つ。


「ココはいいけど…。いいの?未来ちゃん」

 マスターだ。


触ったらチクチクしそうな髭を生やした水色のシャツの人。



 あたしの名前が出たから思わず口をつむいだ。


なんだろう?


後ろにいる杏ちゃんもそっちのけに、あたしの足はすくんでしまった。


「ソレが困ってんだよね」

 笑ってるのは、太一さんだ。