正直言うと、うちの高校のバスケ部はそんなに強くない。

その中でも怜は『格別』だったから、必然的に部長になった。

それでも和気あいあいと走る姿はどこか楽しそうで、それでいいと思う。


 実際見てるのとやってるのじゃ全然違うけど。


「太一は部員じゃないんだよ!」

「でも先輩、県大会いきたがってたじゃないですか!」


 まだ駄々をこねる彼女にオレたちはため息をついた。


「アイツにもバイトとかあんの!」

「高校生活もこれが最初で最後なんですよ!」


 怜と彼女の激しいやり取りを目の当たりにして、オレとサトはあっけにとられる。


 部員の様子は、まただよ…、とでもいいたそうな雰囲気だ。

すると彼女は勢いよくオレに向かってきた。


その鬼気迫る表情にさすがにたじろぐ。


 彼女が口をきゅっと結ぶから、オレもゴクリとつばを飲み込んだ。


「お願いします!!」


 何事かと思えば、ペコリとオレの腰まで頭を下げる。


「は?」

 彼女の向こうにいる怜を見ると、肩をすくめて見せた。


「長谷川先輩を県大会に連れていってあげてください!」