サトの声にはっと我に返る。


 目の前のふわふわな子に小さく「ありがとう」といって身を翻した。

歩き出したのに、腕を引っ張られて危うくつんのめる。


「な、なに!?」

 腕をつかむのはさっきの子。



「バスケ部にはいって!」

「松永!」


 怜の声が少し汗くさい体育館に響いた。


 ふわふわの子はコツんと頭を小突かれて、「いたっ」っと小さな悲鳴をあげる。

頭のてっぺんをさすって、彼女は後ろに現れた怜を見上げていた。


「先輩っ、痛いですよ!」

 ちょっと反抗的な瞳。


どっかでみたことある風景だ。

 どうやら怜は走り終わったみたいで、他の部員は各々ストレッチを始めてた。


「悪ぃな」

 怜は困ったようにオレたちに笑う。

ちょうどサトも隣までやって来て、オレは鞄を受けとった。


「いくぞ、松永」

「えーっ!先輩、この人いれば即戦力ですよ!?」


 はっきりいいすぎの彼女。


 他の部員の立場がないじゃないか。

そこまで言われるオレは嬉しいけど、内心複雑だ。