オレはそっと膝を折って、彼女の顔の横髪を梳いた。


「本当に大好きだったんだよ、サト」


 まだ、納得なんてしないよな。


 怜は教えてくれた。

自分の気持ちに正直にならないと、誰も幸せになんてなれないこと。


「だけど、オレはもう過去にしてしまったんだ。
未練はあるかもしれないけど、それよりも…怜と幸せになってほしいって気持ちのほうが強い」


 昔は言い聞かせていた言葉でも、今は本当にそう思える。


 サトのしゃくりあげる声が、やっぱりまだ胸にしみて。

抱きしめてやれば、気持ちにこたえてやれば聞かなくて済む。


でも、それはオレの本当の気持ちじゃないんだ。



「オレたちは一度諦めてる。諦められる程度だったんだよ」


 自暴自棄とかヤケなわけじゃなくて、言葉にしてから気づくこの想い。

だからサトもはっとしたように、顔を上げてくれたんだ。




 そのあとひたすら、青い空が照りつけて枯らすまでサトは涙を流し続けた。


オレは触れずに、ただ一緒にいた。


 最初で最後、きっとオレたちは同じ気持ちだった。




 ……ごめん。




 でも、ありがとう。