オレは両肩をつかんで、サトの体を引き離していた。


「嬉しいよ、サト。オレも、ずっと……好きだった」

 オレを見上げたサトは、両手で口許を覆ってひたすら大粒の涙を流してた。

昔は、こんな顔みたくなくて答えを引き伸ばしにしていたんだ。




 サトが、ずっとすきだった……。


 なぜだか恥ずかしいとか勇気を振り絞るとか、そんな必要なかった。

それはオレがこの瞬間、気がついたからなんだ。



「たい、ち…」

 長いまつげを震わせて、その小さな唇を向けてきた。

ジリ、と近づいたサトの一歩の期待。



「でも、ごめん」



 やっぱり視線をずらしてしまったオレは卑怯者かもしれない。

だけど、今のオレにはこれが精一杯だった。




 これは怜のためなんかじゃない。


 怜はずっとみてきたんだ……オレを想うサトのこと。

あいつのことだから、サトの中からオレを忘れさせてやるってぐらいの気持ちだったに違いない。



「な、んでよ、太一……っ」

 サトは、その場に力なくわなわなとへたりこんだ。