言いかけたオレを遮るかのような早めの口調に耳を疑った。

あっけらかんと、まるで夕飯のメニューを待ちわびるかのように言う怜。


「な…、なんでだよっ」


 つい声を荒げてしまった。

そんなオレに反発するかのごとく、怜はさっきとは打って変わる鋭い表情。


 ぐいっと勢い欲胸ぐらをつかまれ、それはすぐ目の前にあった。

すこし息苦しいのは、こんな怜の表情をみたからだろうか。



「お前は…いっつもそうだよな」


 吐き捨てるように言うその様は、まさしく苦渋という言葉がぴったりだ。


 怜もサトもオレにとっては大切な友達。

だから力になりたいんだ。


 言ってくれなきゃわかんない。


「なんだってんだよ…」


 なぜか悔しくて、オレは小さくつぶやくと下唇をきゅっと噛んだ。

引っ張られてネクタイがほどけてしまったけれど、気になんかしていられない。


「…なんでっ、知ろうとしないんだよ…っ」


 不意に怜の声と同時に、さらに襟元に力が加えられた。

怜との距離がさらにぐっと近づく。


 必死な怜の瞳にオレは何もいえなかった。


その瞬間、バタンと扉が開かれる。


 ここの階段はよく響くから足音が近づくと分かるのに、それさえも気づけないほどオレと怜は言い合っていた。


 そして、扉を開いたのは……