意地悪するくせに、優しくしたり、コドモっぽくて。

そのたびにキューって心臓が潰されそうになってた。



 でもそれは理由なんかない。

あるとすれば、それは太一さんに恋してたから。



 恥ずかしい気もするけれど、嬉しい気持ちもそこにはある。


 自分の気持ちと向き合えたこと。


 みんながよくいう“スキ”の意味が少しだけ理解できた気がする。

顔がほころぶのが自分でもわかった。


 なかなか進まなかったペンも、太一さんを思い出せば一気にスピードアップだ。

の、はずだった。



「あ……」

 あたしは一つのことに気づいた。

小さな小さな一言に、杏ちゃんはきょとんとする。



「好きって、言っちゃってた……」


 あたしの言葉に、あんぐりと口を開けたままの杏ちゃん。



一瞬間をおいて、杏ちゃんの雄たけびにも似た叫びは、教室中に響き渡ったのはいうまでもない。