その数週間後の夏祭りでわたあめを買いに行くと狼さんがいて驚いたのだ。


狼さんも覚えていてくれて、ひとつサービスしてくれたんだよね。


それから秋祭りも、次の年の夏も秋もお祭りではわたあめを買うようになった。


それ以外でも、朔日参りは学校じゃなければあの時と同じ時間帯に行くようになった。


そうすると、狼さんに会えるから。


会えた時は少しおしゃべりするようになった。狼さんは口数が多いわけじゃないけど、私の話をちゃんと聞いてくれて、たまに笑ってくれる。


その笑顔は作ったものじゃなくて、本当に笑ってくれている気がして私は嬉しかった。


いつのまにか最初の恐怖心はすっかりなくなっていて、それどころか、会えることをすごく楽しみにしている自分がいた。


お互いに「黒田さん」「由香里」と呼び合うようになり、黒田さんが6つ年上だということも知った。


でも、連絡先を知っているわけでもなく、会えるのは1日が休日の日かお祭りの時だけ。


会えない時間が黒田さんへの想いを募らせていった。