私 ホームヘルパーです。

 ルンルンルン。 暖かい真昼間に喧嘩なんてごめんだわ。
今日も通りは忙しそうに車が走り回ってますねえ。 そんなに急いで何処に行くの?
 私も車を持っていたらああなったのかなあ? 信じられないわ。
狸だって車は持ってないわよねえ。 そりゃさあ無いと困る時だって有るけど、、、。
だからって絶対無いと困るって物でもないよね。 高くて買えないし。
 おまけに今の世じゃあ何処から誰が飛び込んでくるか分からないから怖くて走れないわよ。
高速だって逆走する人が居るんだからねえ。 知っててやってるのか、分からなくてやってるのかは知らないけど。
 何が楽しくて煽りまくるんだろうねえ? ほんとに迷惑だわ。
新幹線が煽ったらどうなるんだろう? あちらは無理か。
 でもさあ、新幹線でも居眠りしてたり運転台に足を乗っけてたりする運転手が居たよねえ? 何考えてるの?
ブラブラと歩いてるのもいいわねえ。 でもお腹空いたからパン屋に寄ろうっと。
 メロンパンを買って食べながら歩いてます。 予定が2時なんで、、、。
「次は金森さんね。 あそこは部屋が広いんだよなあ。」 ピピー!
 考え事をしているとクラクションが、、、。 振り向いたら澄江さんですわ。
「こんにちはーー。 移動中?」 「そうです。 金森さんの家へ。」
「ちょうどいいわ。 隣の吉田さんの家に行くから乗ってかない?」 「いいんですか? ありがとうございます。」
 乗ってみると出てきた話がゴミママのこと。 「何で澄江さんが知ってるんですか?」
「私の姉があの店でマネージャーをしてるのよ。 それでね、店長とよく話すんだって。」 「じゃあ、あそこの監視カメラも?」
「んんんん、あれは自治会長さんが付けたって言ってたわね。」 「そっか、、、。」
 「何か有ったの?」 「ゴミママの友達に絡まれちゃって、、、。」
「大変だったわねえ。 でも何で?」 「店に私が通報したって思い込んでたみたいなの。」
 「通報?」 「一度、その現場を見ちゃったんですよ。 だからそう思ったのかも。」
「世の中、勝手に被害妄想に落ちる人が多いからなあ。 困ったものよ。」 話してるうちにマンションに着きましたわ。
 澄江さんと別れて私も、、、。

 その頃、あのスーパーでは? 凛子さんが買い物をしているようです。
(最近 広江さんも見掛けなくなったなあ。) そう思いながら鮮魚売り場へ、、、。
 切り身を篭に入れてカートを押しています。 3時を過ぎた頃ね。
レジへ近付いてみると見覚えの有る顔が、、、。 愛想笑いをすると機嫌悪そうにプイっと横を向きました。
(それだけの人だったのね。 これまで仲が良かったのは何だったんだろう?) 悲しくなった凛子さんはまたまた売り場へ戻っていきました。
 私は居間の掃除のしてます。 とにかく広いのよ この部屋。
会社の社長さんだった人だからねえ。 なかなかに面白い人なんだけど、、、。
 1時間だけだから天手古舞なの。 話を聞いてあげられなくてごめんなさい。
心でお詫びしながらバタバタと走り回ります。 3時間くらい欲しいわ。
ヘルパーを辞めて家政婦にでもなろうかなあ? 妾にされたりして。
 そんなことを考えていたら「何か嬉しいことでも有ったんですか?」って聞いてきたからドッキリ。
「ニヤニヤしてるから何か有ったんだろうなあって思って、、、。」 「いえいえ、そんなことは無いんですよ。」
「そっか。 おかしいなあ。」 「まあ、いろいろ有りますからねえ 最近は。」
なんとか話をごまかして仕事を終わって出てきましたわ。 危ない危ない。
 出てくるとちょうど澄江さんも部屋から出てきたところでしたわ。 「お疲れ様ねえ。」
「いやいや、面白い人だからそうでも、、、、。」 「でもさあ部屋広いよねえ。」
「そうですねえ。 うちなんてネズミの住処ですから、、、。」 「ネズミか。 じゃあうちはアリだわ。」
 二人でそんな話をしながら駐車場へ。 「じゃあ私は食堂の前で降ります。」
「分かったわ。」 澄江さんはスカイラインなのねえ。
この車もなかなかかっこいいなあ。
 食堂の前で下ろしてもらうとさっきの男の人がしょぼくれた顔で出てきました。 (まだ居たの?)
後ろからあのママさんもショボンとした顔で出てきました。 (さっさと逃げなきゃ、、、。)
 私が早足で歩いていると二人は私をチラッと見て何処かへ行ってしまいました。 冷や汗だわ まったく。
ほんとにおかしい人が増えたわよねえ。 あっちもこっちも余裕無さ過ぎだわ。
 余裕が無いから自分のことすら落ち着いて考えられないのよ。 考えたら分かるでしょうよ。
公私混同とか「アイツの物は俺の物」みたいな考えは捨ててほしいわね。 迷惑千万だから。
ついでにさあ、ながら煙草もやめてほしいわよね。 臭いしゴミは散らかすし燃え残りは捨てるし危ないじゃない。
 運転しながらとかパソコンしながらとかかっこいいと思ってやってるわけじゃないと思うけど迷惑よね?
ほんとにさあ自分のことしか考えないお嬢様とお坊ちゃんが増え過ぎたわ。 何とかしてよ。
 ブラブラと歩きながら家にまで戻ってきました。 歩くのもいいわねえ。
さあて、夕食を作りますか。 今晩は月見うどんでもいいかな?
珍しく狸が居ます。 「どうしたの?」
「たまには休めって言われたんだ。」 「あら、そう。」
 特段聞くような話でもないと思ったから私は料理を作っています。 狸も狸で部屋にこもって何かやってますねえ。
そこへ百合子が帰ってきました。 「あれあれ? お父さん居るの?」
「休めって言われたんだって。」 「またそれなの?」
「またって何よ? またって?」 「前にも有ったじゃない。 休めって言われて休んでたらやめさせられそうになったって、、、。」
「確かにねえ。 問題児だからなあ。」 「何とかしてよ。」
「無理だよ。 本人がやる気にならなきゃ変わらないわ。」 「そうかなあ?」
 うどんを煮ながら私たちは揃って溜息を吐くしか無いんですよね。 ねえ、狸さん。
あんたのことであたしらがここまで困ってるのよ。 何とかしなさいよね。
 代わってくれる人が居たら代わってほしいわ。 狸はボーっとしてるから何にも出来ないのよねえ。
やることといえば電子レンジであっためることくらい、、、。 ああ侘しい。
 何でもかんでも私任せなんだからなあ。 私が出て行ったら知らないぞーーーーー。
靴下でさえ何処に入れてるか分かってないんだからね。 困るんだわ そんなんじゃ、、、。
 あんたが死ぬまで面倒を見たくはないからさあ。 さっさと死んでよね。
楽になりたいわ。 ああ溜息ばかり。

 うどんを食べてますと狸が部屋から出てきました。 「おー、夜飯作ったのか。」
「作ったのか。じゃないわよ。 呼んだじゃない。」 「聞こえなかったんだ。」
「またどうせ寝てたんでしょう?」 「寝てないよ。」
「まあいいから、さっさと食べてね。」 冴えない顔の狸に箸を渡します。
 狸には大きめの丼を渡しました。 3玉くらい入ってるかなあ?
付き合ってた頃からよく食べるのよ。 大食い選手権に出てもいいくらい。
 まあね、ギャル曽根みたいには食べれないみたいだけどさあ。
あの人たちの胃袋はどうなってるの? お腹の中って胃袋しか無いんじゃないの?
 私だってよく食べるほうだけども、、、。 ファファファ、、、。
なんか今日もいろいろと有ったからいきなり眠くなっちゃったわ。 お風呂は朝にしようっと。
 そんでもって布団に潜り込んだところに狸がやってきましたわ。 何もしないでねえ。
あーらやだあ。 あーーーーれーーーーー。