私 ホームヘルパーです。

 さあ気分を切り替えて仕事に行きましょう! ルンルンルン。
仕事の時くらいはハッピーハッピーよ。 うん、天気もいいわ。
「おはようございまあす。」 今日も挨拶だけは元気良くね。
 おばあちゃんたちも私が元気なもんだから押されてるみたい。 やり過ぎたか?
まあいいわ。 これくらいじゃないとこんな糞ムカつく時代は生きていけないわよ。
 物価は上がりまくりだし変なのは多いし戦争は終わらないし。 何のためにやってるの?
政治もめちゃくちゃだし国もめちゃくちゃ、、、。
 国乱れん時、まず鬼神乱る。 鬼神乱れるが故に万民乱れる。
そう言った人が居るわね。 ほんとにそうだわ。
何でこんな国になったんだろう?
 鬼神ってさあ鬼じゃないのよ。 簡単に言えば精神風土ってことね。
思想とか理念とかいうやつ。 今はどう?
 国丸ごと思想が壊れてる。 国会も国民も企業も。
思想が壊れてるからみんな揃っておかしなことをやり始める。 不倫 詐欺 ネズミ講 贈収賄、おまけにエッチまで。
そしてさらにみんな揃って歯止めが利かなくなってきてる。 1億総不倫なんてやらかさないでよね お願いだから。
 あの赤ちゃん へその緒も胎盤も付いたままだったっていうじゃない? ということは、、、?
2週間くらい前に何処かでひっそり産んで運んできたってことね? あのさあ、ゴミじゃないのよ。
あんたが妊娠してお腹を痛めて産んだんでしょう? 何で育てようって思わないの?
 そういう女には今後一切の出会いとセックスは禁止ね。 やったら処刑してもいいわ。
生きる資格なんて無いわよ。 これ以上文句を言わせないで。

 頭の中は沸騰しっぱなしなんですけどホームヘルパーとしては怒ってばかりもいられません。
あちらでこちらで掃除をし、料理を作り、利用者さんと少ない時間でもお喋りをしましょうか。
 気を紛らわせておかないと何処で噴火するか分からないからねえ。 私もイライラしっぱなしだから。
そんなわけで動き回って時間が空いたので喫茶店へ。 珍しくコーヒーでも飲もうかな。
 ふと隅っこのテーブルを見ましたら、、、。 あのお惚けママがホットケーキを食べているのが見えましたわ。
(確か、広江さんとかって、、、。) 今日もイライラしているようですねえ。
 スマホが鳴ってます。 出ないんでしょうか?
「だから何なのよ! ごみを捨てたって証拠が何処に有るの? 言ってごらんなさいよ!」 またやってる。
 飽きない人だなあ。 あっちでこっちで喧嘩してそんなに楽しいか?
喫茶店のお姉さんも渋い顔をしてるじゃない。 考えてよね。
 しかしまあ長電話で喧嘩してスッキリしたのかな? どうなんだろう?
相手の声は聞こえなかったからどうなったのかは分からないけど、、、。
 気を取り直してまたまた仕事へレッツドーン! 何だそりゃ?
道を歩いていたら美和子さんが車で走ってきました。 「こんにちはーーーーーー!」
やっぱり元気いいなあ。 「急いでるので失礼しまーーーーーす。」
行っちゃった。 シルビアか、、、かっこいいなあ。
 んでもって私は柳田君江さんのお宅へ、、、。 午後はここからスタートでーす。
柳田さんも学校の先生だったのよね。 いろんな話をしてくれるわよ。
 しかもさあ大阪生まれなのよ。 なんか剽軽な性格なのよねえ。
掃除しながら話していると万博の話題が出てきましたわ。 55年前もそうだったのよね。
 「万博はね、見せびらかす所じゃないのよ。 なんか勘違いしてるわよね。」 「そうかなあ?」
「車で空を飛ぶって言っても完全に出来上がってからじゃないと見せちゃいけないと思うのよ。」 「そりゃまあそうかも、、、。」
「それに大部分は突貫工事でしょう? 建物自体が不良品だと思わない?」 「どういうことですか?」
 「ふつうならね、出来上がって「これなら大丈夫。」ってならないと入れないと思うんだ。 でもなんか焦ってないかな?」 「うーーん、私には、、、。」
「それに予算だけが膨らみに膨らんで国民のためになるのかならないのかさえ分からないでしょう? 今回の万博は成功したように見えてもかなりの大損よ。」
 確かに開幕してもさらにさらに問題が噴出しているようで目も当てられない気がするわね。 出来上がってないパビリオンも有るんでしょう?
雨水が噴き出してる所も有る市メタンガスが出てる所も有る。 通信網はハチャメチャだし食べ物はお高い。
 入場しても何処が何処やら分からないしトイレだって近未来的な難問だらけだし、、、。
やっぱりね技術的な物はシンプルが一番よ。 トイレだってそうでしょう?
 デザインなんて二の次よ。 使いやすさが一番ね。
広くてたくさん有って通路も分かりやすく利用しやすいトイレ。 これが一番よ。
 システム障害まで起きて使えないんじゃあ意味が無いわねえ。 デザイナーの自己満足って言われても仕方ないわよ。
それだったらさあ人がドアの前に立ったらセンサーで感知してドアが開いて入ったのを確認したらさっとドアが閉まるとか、、、。
終わったら後ろのドアが開いて「こちらへどうぞ。」ってアナウンスするとか、通路を通ったらトイレの前に出てくるとか分かりやすさが無いとダメよねえ。
 トイレは芸術品じゃないの。 日常生活品なのよ。
でね、中を確認した買ったらマイクで声を掛ければいい。 「yes。」って聞こえたら入ってるのよ。
 お店なんかで使われてるトイレのほうがよほどに親切よねえ。 「ありがとうございました。」って言ってくれるんだから。
そんなこんなで渡り歩いているうちにお昼になりました。 お腹空いたわねえ。
 公子さんが居ないことを確かめて食堂へ、、、。 (今日は混んでるなあ。)
炒飯を食べているとどっかで見掛けたママさんが入ってきました。 「あんたね? 私をスーパーに訴えたのは?」
「は? 何のことでしょう?」 「とぼけないでよ。 あたしがゴミを捨てたのを見てたでしょう?」
 いきなりの喧嘩ですわ。 堪ったもんじゃないわね。
「あんたが余計なことをするからゴミを捨てられなくなったじゃないのよ! どうしてくれるのよ?」 「私に言われても困りますよ。」
「逃げないで! ちゃんと話しなさい!」 「仕事中ですから。」
「そう言えば逃げられると思ってるのね? そうはさせないわよ。」 (しつこい人だなあ。)
 「次の予定が有りますから。」 「逃げる気ね? ただじゃおかないわよ!」
さっさと食べ終わって支払いをしていると、だちらしい男が入ってきた。 「話を聞かせてもらおうか。」
「仕事が有りますから、、、。」 「うっせえ! 俺のだちがお前のせいで迷惑を被ってんだぞ! 慰謝料くらい払ったらどうだ!」
 店先で怒鳴りつける男の人、、、。 そこへ店長が出てきました。
「おー、吉村じゃないか。 務所から出てきたのか?」 「親父さん、、、。」
 「まあまあこんな所で騒いでないで中に入れ。」 「いや、それは、、、。」
「何だ? また疚しいことでもやってんのか?」 「そうじゃないんだ。 こいつのせいでだちが迷惑を被ってるんだ。 その始末を付けてもらおうと思ってな。」
 「ああ、あのスーパーのごみの件か?」 「そうなんだよ。」
「それなら心配するな。 店に言ったのは俺だからよ。」 「親父さんが?」
「そうだよ。 あそこの店長からずっと相談されてたんだ。 看板を立ててもゴミを捨てに来るやつが居るから何とかしたいってな。」 「じゃあ親父さんが?」
 「そうだよ。 俺はこの辺の自治会長もやってるんだ。 役所からもうるさく言われててなあ。 困ってたんだ。」 男はだんだんと肩をすぼめてきた。
「そりゃなあ気持ちも分からんではないよ。 だけど迷惑を掛けることはやっちゃいかん。 自分が正しいと思っても相手が居るんだ。 相手のことも考えてやれよ。」 「はあ、、、。」
 「ごめんなあ。 怖かったろう? 行っていいよ。 後始末は俺がするから。」 店長さんはそう言って男の人を連れて店に戻っていきました。
すごいなあ。 あんな度胸が狸に有ればいいのになあ。 そういえば監視カメラが付いてたわよね。
あれもあの店長が付けたのかなあ? まあ詮索はしないわ。
 それにしてもお腹空いちゃったわねえ。 せっかく食べたのに、、、。