翌朝、仕事から帰ってきた狸が居間に入るなり疲れ切った顔で椅子に座り込みました。 「どうしたの?」
「いやね、仕事の帰りに公園に寄ったらボディーラインくっきりして歩いてる女が居たんだ。」」 「それで?」
「気になって見てたらさあ、変態だ之嫌らしいだの何だのって騒ぎ出して、、、。」 「ああ、そんなのはほっといていいわよ。」
 「でもさあ、、、。」 「あのねえ、自分から「見てください。」って言ってるような女なんか相手にしないの。 あんたには私が居るのよ。」
どっかの書き込みで見たことが有る。 「ジロジロと見ないほうがいいと思います。 変な気持ちになったり怖がられたりするから。」
 まったくね、アホかって思うわよ。 男も男だけど女も女よね。
確かに80年代のテレビ業界はすごかったわよ。 バラエティー番組でいきなり全裸の女性が画面の前を横切った李エッチなシーンが流れたり、、、。
 『ロボっ子ピートン』の漫画だってすごかった。
ロボットの女の子がガソリンを注入するシーンが有るんだけどさあ、、、。 お尻丸出しで真ん中にホースを突っ込んで注入してたのよね。 そのシーンをよく雑誌に載せられたなあ。
 しかもね、それを見たピートンが真っ赤になるのよ。 あたしらだって真っ赤になったわ。
『サイボーグ009』だってジョーとフランソワーズのエッチーーーーなシーンが有ったでしょう? 今じゃあ考えられないわよね。
 報道業界がこぞって載せなくなったからリアルでそうなってるのかなあ? はっきり言って見せ過ぎやり過ぎ大胆過ぎ。
「それでどうなったのよ?」 「社長も一緒だったから一緒に謝ってもらった。」
「情けないおっさんたちねえ。 「ごめんねえ 見ちゃったねえ 許してねえ。」って言って逃げてくれば良かったのに。」 「そんなわけにはいかないよ。」
 「またまた、そういう時だけいい子ぶるんだから。 やめてよね。」 「だってさあ、、、。」
「だってもくそも無いわよ。 「見てください。」って言ってるほうが悪いの。 それで見たからって切れるなんてどうかしてるわよ。」 「お前はそうかもしれんが、、、。」

 朝から大声でやり合ってるものだから息子君が心配して見に来ました。 「父ちゃんも脇があまいなあ。 そんなのは「見せるんじゃねえよ 馬鹿!」って言ってやればいいの。」
「あんたも経験有りそうね?」 「店で働いてる時にもさあ、胸を自慢してる女が来るんだよ 時々。」
「それで?」 「後輩の子はそれをじーーーーっと見てたから「見るな 馬鹿。」って言ってやったんだ。」
「後輩に?」 「そうそう。 なんでも好みのボインだったらしいんだ。」
「よく有るわねえ そんなの。」 「そしたらさあ、その女が嫌らしいの何のって文句を言い始めたから店長に報告したんだ。」
「んでどうなったの?」 「「風俗的に問題が有る人には出て行ってもらおうか。 俺がやるからいいよ。」って言ってその人を出禁にしたんだって。」
「あらまあ、そこまでやっちゃった、、、。」 「確かにね、居酒屋だから危ない人たちも来るんだ。 でも見せておいて騒ぐのは無しだよねえ。」
そこまで言うと息子君は狸の顔をじっと見詰めました。 これじゃあ疲れるわ。
 どうもねえ、ボディコンが流行って以来、見せたい女が増えてるような気がするなあ。 見せなくたって見えてるのにさあ。
国がめちゃくちゃになる時、精神的にも風俗的にも乱れちゃうのかなあ やっぱり?
 どんなにいい仕事をしていても風俗的にルーズな人はやっぱり信用できないわよ。 何でこんな国になっちゃったのかなあ?

 今日はお休みなんですよ。 それで私は思い切ってプチ旅行をしようと思うんだ。
え? 狸は連れて行かないのかって? 帰ってきたばかりだもん 家に置いて行くわ。
 さあて、久しぶりに電車に乗りましょうか。 ここは御手洗駅ね。
行き先は日帰り温泉が有名な花畑駅。 ロマンティックねえ、花畑なんて、、、。
 切符を買って改札を抜けて2番ホームへ行きます。 なんかお姉さんたちが盛り上がってる。
(嫌な連中だなあ。 もしかしてこの人たちも温泉に行くの?) キャパママですねえ。
 5人くらい固まって大声で喋りまくってます。 うっぷん晴らしでもしてるのかなあ?
電車はうーーん、4両くらいかな。 私はなるべくあの集団から離れて乗りましょう。
 いい天気ねえ。 プチ旅行には最高じゃない。
花畑までは40分ほど。 のんびり窓の外を眺めていると、、、。
前の車両から数人のおばあちゃんたちが移ってきました。 どうしたんだろう?
 「うるさい人たちよねえ。 あれじゃあのんびり乗ってられないわ。」 「若いからっていい気になってるのよ。 信じられないわ。」
「あの人たちも温泉に行くのかねえ? うっとおしいわ。」 「この電車に乗るくらいだから温泉行きよ。 ほっときましょうよ。」
「ほっといたってあれじゃあ迷惑以外の何物でもないわよ。」 相当にひどいらしい。
 次の駅でもおばさんたちが乗ってきました。 みんな温泉狙いね。
この辺りは田んぼも多くて【ザ 田舎】って感じ。 好きだなあ、この雰囲気。
 ちょいと前の車両を覗いてみましょうか。 うわーーーー、盛り上がってる。
どう見てもみんな30代よね。 いいご身分だわ。
たぶん、旦那さんの前ではしおらしくしてるのねえ? 仮面夫婦じゃないよ。
あんなのっていつか不倫して出て行っちゃうのよね。 尻軽女だわ。
 連結器の上でぼんやりしていると花畑に着きました。 さあさあ目指す温泉へ、、、。
ここねえ、露天も在るのよ。 私はもちろん中ね。
 さっきのおばさんたちと中風呂へ行きますと何やら大きな声が聞こえます。 さっきのママたちがはしゃいでいるようですわ。
絶景だのきれいだの気持ちいいだの、何処から聞こえてくるのかなあ? 「あの人たち露天に入ったんだわ。」
窓が開いているからよく聞こえるんですねえ。 うっとおしいママたちだわ。
 「あたし、温泉の人に言ってくる。」 一人のおばさんが風呂を出て行きました。
あれじゃあ文句も言いたくなるわよ。 中風呂はドーム型だからよく響くのよねえ。
ほんとにうるさいわ。 しばらくすると館内放送が、、、。
 「お客様 いつもご利用をありがとうございます。 たくさんの利用者様がいらっしゃいますのでご迷惑をおかけにならないようにお願い申し上げます。」 でもまあ騒ぎは収まらないようね。
30分ほどして放送は繰り返されました。 そして暖まった人たちは休憩室へ、、、。
 私ものんびりしていると、さっきのママたちが入ってきました。 (やだなあ、また一緒だわ。)
ママたちは真ん中に集まるとジュースを飲みながらペチャクチャとお喋りを始めましたです。 部屋の隅っこで歯毛布をかぶったおじさんが昼寝をしてます。
 ママたちのボルテージは一向に下がりません。 終いには大爆笑まで、、、。
 おじさんは毛布を頭にまでかぶって凌ごうとしていますが、、、。 だんだんイライラしてきたようですね。
ゴロゴロと動き回ってます。 (あれじゃあ爆発するぞ。)
 さっきのおばさんたちも苦虫を噛み潰したような顔を見合わせてます。 そこへ、、、。
 温泉の職員が入ってきました。 「すいません。 ここで休まれてる方もいらっしゃいますので大騒ぎは辞めてもらえませんか?」
「あたしらがいつ騒いだのよ? 騒いでなんかないわよ。」 「そうよそうよ。 文句を言ってるのは誰なのよ?」
「ですからそうやって大声を出すのは辞めていただきたいんです。」 「あたしらが楽しくやってるのが悪いの? そんな所なの? 私らの何が悪いのよ?」
ママたちは一斉に職員に噛みつきました。 おー、怖い。
 「ですからそうやって大声を出すのは、、、。」 「声が大きいのは生まれつきなの。 どうしようもないのよ。 文句が有るんなら声を小さくする方法を教えてよ。」
茶髪ママのおとぼけにみんな揃って大爆笑。 それを聞いたおじさんが、、、。
何を思ったのか毛布を投げ付けて言いました。 「あんたら、上せるんじゃねえよ! ここはあんたらだけの遊び場じゃないんだ。 遊びたかったら出て行け!」
「何よ あんたこそ何様なのよ!」 いやいや、これじゃあ収まらないわ。
 おばさんたちはさっさと逃げ出して別の部屋に行ったようですね。 職員さんは必死に止めようとしているんですけど、、、。
なんか巻き添えを食らってジュースを浴びてるみたい。 ああ、可哀そう。
 ママたちはさらに大きな声で騒ぎ始めましたわ。 収拾がつかなくなったようね。
私は温泉を出て近くのレストランへ、、、。 やっと落ち着けるわ。