チャイルドシートを嫌がる子どもが多いけれど、可愛いピンク色を選択して正解だったな。


「これ、ひおのシート?」

「うん、そうだよ。自分から乗れて偉いね」

「だってー、これのらないと、おでかけできないよ」

「あはは! そうだ、よくわかってる」


妃織ちゃんの頭を撫でると、花が咲いたような可愛らしい笑顔をこちらへ向けてくれる。「すみません……」と小さく言った美優のことも車内へと促し、俺は再び運転席へと乗り込んだ。

ナビで水族館までのルート案内を入力し、ゆっくりと車を発進させる。
よほど今日を楽しみにしていたのか、妃織ちゃんは後部座席でイルカやラッコのについて話をし始めた。


「妃織、ちょっと静かにして」

「えー、もっとイルカさんのおはなししたいもん!!」

「あはは! 妃織ちゃん、それじゃぁ先生に聞かせてよ」

「いいよ!! イルカさんはね……」


運転しながら、耳だけを妃織ちゃんの方へと傾ける。今の時点でこんなにはしゃいでいる妃織ちゃんは、水族館に着いたらどんな反応を見せるだろうか。

それにしても、美優の表情は相変わらず冴えない。
きっと、俺への遠慮の気持ちが(まさ)っているからだろうと思う。そんな風に思って欲しくない。

普段気を張り詰めている美優にも楽しんで欲しくて、今日出かけることを提案したのに。