そんなことを考えつつ診察室に戻ると、女児のカルテを開く。すぐにレントゲン画像を確認すると、やはり俺の予想していた通り、右大腿部骨幹部骨折だった。
これは、骨接合術ーー骨折観血的手術という手術をしなければ、骨癒合は難しい。まずは透視下に整復で骨折のズレを直し、それから手術だ。

処置室に目をやると、ストレッチャーに乗せられた女児、妃織ちゃんと母親が不安そうに診察に呼ばれるのを待っているのが目に入った。

手術が必要だと伝えてこれ以上母親の不安を煽りたくはないが……仕方がない。
これも、俺たち医者の役目だ。

場所を移動してもらいレントゲン画像を見せると、母親が「あっ」と声を上げた。おそらく、骨折が目に見えてわかったのだろう。大腿骨頚部骨折、転子部骨折はCT画像をしてみないと診断しづらいこともあるが、骨幹部骨折は誰が見てもすぐにわかるというのが特徴だ。


「右の大腿骨が骨折しています」


そんな風に説明すると、一瞬で母親の表情が曇った。


「手術が必要な骨折ですので、今日から入院になります」

「えっ、手術ですか?」

「はい。手術をしないと、骨が変形したまま骨癒合してしまいますので。今から必要な検査に回ってもらいますが、なにかこれまでに大きな病気はされたことありますか?」

「……いえ、特には」