そんな自由気ままな妃織に笑いつつ車に乗り込むと、晃洋さんは車を発進させた。

途中でコンビニへ立ち寄って、リンゴジュースとコーヒーを購入。
このコンビニはまだ私たちが出会った頃、初めて水族館へ行ったときに寄ったコンビニで、あの頃の記憶がふと蘇った。

初めは晃洋さんとの接し方がわからず気を遣っていたっけ。


「妃織? 今日は『いや』って言うのなしにしような。パパと約束」


運転しながらルームミラー越しに妃織に話し掛けている晃洋さん。

その言葉の裏には『今日が3人で出かけることができる最後の日だから』という、晃洋さんの思いが垣間見える。
そんなこととはつゆ知らず、先ほど購入したリンゴジュースに夢中の妃織。


「妃織、パパの話聞こえた?」

「うんー、いやっていわない。やくそく」


リンゴジュースを飲みながら、適当な返事をしている妃織がやけにおもしろく思える。
ふとルームミラー越しに目が合った晃洋さんも口元が緩んでいるようだった。

そんなやり取りを交わしつつ、水族館へ到着。
車をパーキングへ駐車させている時点でテンションが上がってきた妃織は、チャイルドシートに座ったまま足をバタバタと動かし始めた。


「さぁ、着いた。お待たせ妃織」

「わぁーい!! パパ、はやくイルカさんみよう!」