私がこんなに痛がっているというのに笑うなんて、ひどい医者。


「……それでも、一生懸命小さな命を守った証ですね」


包帯の端っこをテープで留めながら、山内先生は小さな声でそう言った。

それはそうかもしれない。子どもの命を守るのは親として当たり前のことだし、別にすごいことでもなんでもない。
でも、私が覆いかぶさったせいで妃織が骨折してしまったわけだから……正直なところ、妃織に対して後ろめたい気持ちもある。

私がゴミを捨てるとき、妃織も一緒に抱きかかえていたら……とか、そんなことばかりだ。


「お母さんの行動は、決して間違っていませんよ」


にっこりと笑いながらそう言ってくれた山内先生。
そんな風に言ってくれて、今まで張り詰めていたなにかが私の中でガラガラと音を立てて崩れるようだった。

しだいに涙がぽろぽろとこぼれ始め、今日着てきたスカイブルーのワンピースにポツポツとシミができていく。


「私……自分のせいで妃織がこんな風になったって……思ってて」

「それは違いますよ。今回はこんな風になってしまっただけ。お母さんの判断は、間違ってはいないですから」


励ますように、ポンっと肩を叩いてくれた山内先生。
その励ましの言葉が心に染みて、両手で顔を隠しながら涙を流した。