駄目だ、焦るな、食い気味で聞いたりしたら、またシアにからかわれる。
 彼女から話してくれるのを待とう。



 考えて考えて目は冴えていたのに、いつの間にか眠っていた。
 昼前にベッドに入ったのに、目覚めると既に部屋の中は薄暗くて。
 枕元の時計を見たら5時過ぎだった。
 ちょっと昼寝のつもりだったのに、本格的に寝るなんて。
 驚きと同時にぶるっときて、リビングへ行った。

 11月の上旬は朝夕は冬並みに冷える。
 カウチで眠ったシアは風邪を引いていないだろうか。


 バスルームから水音が聞こえている。
 先に起きたシアが使ってるのね。
 彼女が出てきたら、交代でシャワーを浴びようかな。
 教えてなかったけれど、タオルがどこにあるか、分かってるんだよね、さすがルームメイト。


 夕刻のリビングで、ストーブも灯りも点けずにぼんやりしていた。
 不思議と寒くなかった。
 私がそこで座っているとは、シアは思っていなかったんだろう。
 お互いに気が緩んでいた。


 私も思いもしなかった。
 バスルームから、濡れた髪を拭きながら、腰巻きタオル姿の男性が出てくるなんて。


 驚き過ぎて、声が出ない。
 相手だって驚いただろうが、立ち直りは私より早かった。


「バレちゃったかー」



 バスルームからの灯りが一瞬だけ、向きを変えたその顔を照らした。
 そう言ったのは黒髪金目の凄い美形の男性だけど。 

 ……多分、時戻しの魔女。