「フィリップスさんのところに行く、って?
 何処に居るのか知ってる、ってこと?」


 月曜日に必ず、借りたお金とコートを返します、と言った。
 頷いたあのひとが名刺に裏書きしたのは、来週の午前中は居る、と教えてくれたお店の名前だった。

 あのひとが今何処に居るのか、私は知らない。


「……フィリップスのところに、あたしが行くのはそんなに嫌なの?」

「……」


 内心の動揺を隠しきれていなかったのかも。
 それを察したのか、魔女のからかうような雰囲気は消えた。


「意地悪を言って、ごめんなさい。
 10年後のディナとあたしは……
 ……貴女は親友だから、嫌われるのは嫌だ」


 親友?
 私と露出狂の魔女が?


「昨夜は、シドニー・ハイパー・エドワーズとモニカ・キャンベルが婚約をした日」
 
 会ったことがないはずの。
 ふたりの名前を口にした魔女は、呆然としている私を抱き寄せて、囁いた。


「昨夜の貴女を助けたくて、時戻しの魔法を自分に掛けて、あたしは10年後からやって来たの」