最低だ、と分かってた。
 だけど、止められなかった。
 他の奴に取られないように。
 君に俺を刻み付けたかった。



 絶対に気を付けようと思っていたのに。
 想像していた以上に19歳の君が愛しくなって。



 チビの俺を守って助けてくれた。

 料理は不得意なのに、わざわざパピーのためにポリッジなんか作ろうとして。
 火加減が分からない君のポリッジはいつも壊滅的な出来なのに、可笑しかった。


 何て健気で、何て可愛いんだと思って。
 女性同士だから許されるだろう、と。
 隙あらば抱き締めて。


 魔女のシアで押し通すつもりが、気が緩んで。



 夕方と夜の間の人恋しくなるあの時間。
 ひとりカウチに座っていた君が、頼りなげに見えて。
 気が付いたら触れていた。


 首筋を確認した。
 あの日、ガキだった俺が噛みついた首筋。
 怯えられて、無詠唱で君からあの恥ずかしい俺の記憶を消した。



 もちろん跡など残っていなくて。
 それだけ確認したら離れるべきだったのに。


 それなのに、触れてしまったから。
 君が俺の黒子に触れてしまったから。
 どうしようもなく、自分を止められなくて。


 最低だ、分かっていた。
 君は彼女だけれど、まだ彼女じゃなかったのに。

 同じ君だから、これは浮気じゃないのだと思い込もうとしたけれど。



 正直に言うよ。
 俺はあの時、19歳の君だけを見て。
 眠ったままの29歳の君のことを忘れた。
 最低な恋人だ。



 君に俺を刻み付けたかった。
 次に会える時まで、誰にも取られたくなくて。
 誰のことも好きになって欲しくなくて。


 罵られても、怒られても、睨まれても、泣かれても。
 愛しさに胸が締め付けられた。




 何かあれば、俺の名前を呼んで。


 次に会える日まで俺を忘れないで。


 俺が君に会いに行く、その日まで……


 俺には君しかいない。
 君だけしか要らない。


 俺の夢は……
 君とずっと一緒にいられたら、もう寂しくはない。



 俺は一生このひと、と決めているから。



 


   おわり