良かった、ヴァイオレットお姉様の『あの地味なオルくん』発言は見逃して貰えた。 


 8割増しなんかじゃないオルの素顔を見た感想は次回の楽しみにしておこう。
 皆の愛しいひとが、ジャガイモに見えなきゃいいけど、なんて。
 私の意地悪心が久々に疼き出す。



 オルが私の手を取って、立ち上がらせる。


「彼女を連れ出しても?」

「いいわ、いいわよ! ご遠慮なく、どうぞ!
 だけど、来月の司法試験までには返してね!」


 立ち直りの早いモニカが、代表して陽気な笑顔で言うが。


「遠慮はしませんが、今日中にはお返しします。
 私もまだ学生で、門限なんかもありまして」


 オルは大人っぽく見えたが、まだ18で。
 ダンスホールは18歳以下は入場禁止だ。
 入口の身分証明書チェックを受けずに、いきなりここに現れたんだ、と気付いて。
 皆の笑顔が苦笑いに変わった。


「帰りはここには戻ってきません。
 直接キャンベルの邸へ送りますから。
 じゃあ、ディナはいただいて行きますね」


 そう言うなり、私はオルに緩く抱き締められて外へ連れ出された……と言うより。

 気が付いたら、店の外に居た。