私の夢の芽は、花が咲いたのね!



「オルの夢、って何?」

「うーん、それはお楽しみで教えない」


 またか……やっぱり私の魔法士は意地悪だ。
 でもそれで良い。
 先が分からないから、毎日どきどきするから。


「これから13年後に戻ったら、この会話をした29歳の私が貴方を待ってるのね?」

「そうだね、ややこしいけど」

「キスしたら、バレるね?」

「本人だからね、誤魔化しようがない。
 多分、めちゃくちゃ怒られる」

「よくもあの時、私にキスしたわね!って。
 私に怒られるのね」


 夕闇がどんどん深くなってきて、変な気分になる前に、と私達は離れた。


「スピネルの血が一滴も残ってないか、チェックしとく。
 君が気持ち悪いからと、俺と踊ってくれないのは辛い」




 私をムーアの邸に送ってくれるのは、魔法庁の職員の人だ。
 オルはこれから倉庫の中に居る師匠と合流して最後に内部を点検してから、王城へ帰り、それから13年後に戻るそうだ。
 2回に分けて。


 泣き虫なオルも。
 彼の泣き虫が移ってしまった私も。
 もう泣かなかった。


 私達は、また会えるから。



「私を幸せにしてあげて」

「あのガキを幸せにしてやって」



 お互いにそう言って、夜になる前に。

 私とオルは別れた。