「オルは何か言ってた?」

 何度か王族パレードで見たことがある専属魔法士の真っ白なローブを羽織った、年齢不詳の美女に腕を掴まれた。
 さっきまで一緒に居たオルが魔法士のローブを羽織っていたかどうかさえ、思い出せない。
 とにかく、彼の顔だけを見ていた。


「私はヴィオン。
 あいつは何て言ってた?」

「絶対に俺の手で殺す、と」

 私が答えると、本物の師匠が舌打ちをした。


「また問題になる……
 私はこれから中に入って、あの馬鹿が止めを刺す前に止めるから。
 貴女はお祖父様達と出来るだけ、遠くへ逃げなさい」


 それだけ言うと、師匠の姿がこの場からすっとかき消えた。


 不思議だった。
 勝手に、師匠は小柄なお爺さんのイメージがあった。
 あんなに綺麗な女性とは思わなかった。
 だけど不思議なことに、いつもの私の呪いが発動しなかった。
 ただ。
 オルをお願いします、と思った。


 私も怒りに任せて、若干煽るようなことも言ってしまったが、オル本人の命が危なくないのなら、出来れば。

 オルの手を、あんな男の血で穢されたくない。
 問題にされて、後からオルが処罰を受けてしまうことも嫌だ。


 ただ、ただ。
 無事なオルに会いたい。