その人の行動は早かった。

 あっという間に痛みでぐったりしているパピーを自分のコートでくるんで抱き上げ、移動したガス燈の下で服を捲って、背中の傷を確認した。


「分かりますか?
 これは鞭で打たれた傷ですよ。
 一旦、塞いでいた傷口があの親父に乱暴に揺さぶられたせいで開いた感じですね」


 乱暴に揺さぶられたせい、と言ったのを聞いて頭が冷えて、浮わついていた気持ちが醒めた。
 この人は最初の方から見ていたんだ。
 だけど助けてくれなくて、全部終わってから声を掛けてきた。


 モニカのことは嗤えない。
 私にも守られたい願望があったのだと思い知る。
 見知らぬ男性から力になりたいと言われて、ちょっと頼りたいと思ってしまったのだ。
 

 こんな、どこの誰だかわからない……
 ちょっと格好いい大人の男の、大きな背中に。