「さっきの、サイモンと、その妹のクララは分かりますよ。
 後の女性ふたりは誰だろう。
 君は紹介してくれないし、彼女達も自己紹介しないし。
 まあ、誰でもいいですけれど、巻き込まれて可哀想に。
 君を片付けた後に、ムーアの邸ごと全員を燃やしますから。
 1ヶ所に集めてくれるのは、手間が省けて助かりました」

「……」

「……あまり驚いてくれないから、楽しくないですね。
 私の正体は、お見通しというのかな。
 全くアレの言う通りだ、ディナは頭も口もよく回る、と聞いていましたよ。
 お口の方は、今は静かですね。
 もうちょっと騒ぐくらい怖がって欲しかったのに。
 本当に君は可愛げがないから、いささかがっかりです。
 ……ほら、何とか言ってください」

「……ここではなくて、私がお勧めする場所でなら、おしゃべりします」

「つまり、君が私を罠にかけるために、そこに連れて行くんですよね?」



 こらえきれないように、オルの師匠を名乗った男が笑い出した。
 私をからかうような、馬鹿にしたような笑いだ。


 オルが狼なら。
 こいつは、綺麗な蛇そのもの。


 いくら面食いの私でも、好きになれない。