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 先々代、つまりキャンベルの祖父に、一度嫁を連れて顔を出せ、と言われた父は身重の母と共にクレイトンへ帰った。
 顔だけ見せて、祖父の言うことを聞き流して、とっとと王都へ戻ろうと思っていたのに、兄夫婦の歓待を受けてしまって、泊まらずに帰ることは出来なくなったらしい。


 その歓待は兄夫婦だけでなく、まだ1歳半だったモニカも同様で。
『じ、じ』とまだちゃんと発音出来ていなかったが、ペイジと呼んで懐いてくれた、と母は嬉しそうに話した。


 翌日の朝食の席で、母に対して祖父の放った一言に激昂した父が手を出しそうになったので、伯父が頭を冷やせ、と父を領地の見回りに連れ出してくれた。

 父が戻ってきたら直ぐにクレイトンを出ようと言い残したので、そのつもりだった母に、また祖父が何か言ってきたらしく、
(どれ程の言葉を投げつけられたか、母は言わなかった) ノックスヒルに来てから、祖父の言動に精神的に参っていた母は倒れてしまった。


 意識を失くした母は、当然そこから記憶がないから、それからの話はメイド長のカルディナから聞いたのだと言う。


 ひとりで歩くのをおぼえて、その午前中も大好きになった『じ、じ』の側に居たはずの幼いモニカがよたよたと伯母のところへ来て。