邸に設置された電話。
 叔父様から使用方法を説明された。
 叔母様が時間に気を付けて、って私にも注意したけれど。
 私は電話を使ったことはなかったの。


 貴女には王都からお祖父様や従兄弟達から電話が来るし、掛けていたし。
 だけど、私には誰も掛けてこない。
 私には掛ける相手も居ない。 




 ずっと一緒に居たのに、私と貴女の世界は離れてしまった。

 貴女が欲しいと願うものを、私も欲しい、と。
 今度こそ努力すれば。
 私達はまた近付ける?



 段々意味もないのに笑うのに疲れてきて、ここは私の家だったのに、どうしてこんなに怯えなければいけないの。
 ずっと愛想を振りまかないといけないの、理不尽じゃないの、って。


 そんな鬱憤が貯まると、外で吐き出した。
 だけど後から聞かれても『そんなこと、言ってません』って逃げられるように言葉や相手は選んでいたつもりだった。


 そんな大事になると思わなかったの。
 ちょっと可哀想に、って存在を認識して欲しかっただけ。

 その結果リアンに怪我をさせるなんて。
 叔父様にも叔母様にも、クリフォード達からも見棄てられて、ここでひとりぼっちになるなんて。


 皆に……今まで聞かせた話は違うんです、と言えば変わるの?

 誰に、どこまで回ったのか、分からない。


 もう私には、何が正解なのか分からない。

 分かっているのは。

 ムーアの子供じゃなくて、ごめんなさい。


 
 それだけは、確か……