「私の両親を、このひと、あのひと、言わないでくれる?
 お父様を外であのひとなんて言ったら承知しないわよ?
 あんたが今までべらべら話していた匂わせなんかじゃ終わらなくなるわよ?
 それがどう受け取られてしまうか、分かってるの?」


 私の指摘に、モニカが黙った。
 儚げな美少女の姪が、今でも若々しい叔父のことを、あのひと、なんて呼べば。
 違う意味の虐待だと捉えられてしまう。


 さすがのモニカもそれは困るのだろう。
 顔色を変えて黙った。
 この機会に一気に片を付けよう。


「この部屋に、伯父様の遺言書があるらしいの。
 引っ越しを理由に、これから荷物を片付けながら、それを探すのよ。
 遺言書が見つかってお父様がそれを認めれば、3年後の成人を待たずに、貴女は女伯爵になれるわよ」


 前伯爵の遺言書はモニカの部屋で見つかったらしい、とオルが言っていた。
 それが本当かどうかは分からないけれど。
 それを見つけたくて、この部屋を家捜しするために。
 移って貰うと理由をつけた。


 それに、モニカだって、本当はこの部屋なんかに入りたくなかったのだから。
 今からでも移ってくればいい。
 この先を曲がった、私達の部屋が並ぶ、あの辺りに。


 当主夫人のこの部屋に比べたら、日当たりも風通しも悪いけれど。

 家族なんだから。