世間を斜めに見ているような、何を考えているのか、分からない。
 つかみどころの無いひと。
 その複雑さがたまらなく好きだった。
 だから、私もそれに合わせて……努力した。


 だけどオルと出会って、気付いてしまった。
 私は無理をしていただけ。
 本当は『愛してる』や『好きだよ』と愛の言葉を囁いて欲しい。
 可愛いと抱き締めて、甘やかして欲しい。


『君にはその価値がある』と言ってくれたことは忘れられない。


 どういうつもりなのか分からない、思わせ振りなひとはもう要らない。
 何度も言うけれど、貴方とやり直したくて、時戻しをしたんじゃないから。


 嗤われても平気な顔している私をどうしたらいいのか分からないように、サイモンが髪をかきあげる。
 その仕草も好きでしたよ。
 クララにはこんなに優しく出来るんだから、これから好きになる女性には分かりやすくしてくださいね。



「犯罪の片棒を担がされる、って話を聞かせてくれるかな」

 ようやく、彼も信じてくれたようだ。
 なので、私はこの先の13年間の話を聞かせた。


「あいつ……そんな……悪い奴だったなんて。
 俺は毒を持っていた?」

「用済みになったら使うように持たされたんじゃないでしょうか?
 それと、最近になって先輩の性格を思い返したら、ある仮定が生まれました」

「ある仮定……」