しかしながら、ギャラリーの前で
『私はお貴族様なのです、文句ありますの!』をやってしまったのは、私。

 父の爵位に、クレイトンの名に懸けて。
値切ることは致しません!出来ません!くそっ!  


 それでもぼったくられるままに、素直に支払うのは業腹だ。
 ちょっとぐらい言わせて貰う。


「おひとつ6ルアのパンなんて、私は食したことはございませんわ。
 とても美味なのでしょう、是非とも我が伯爵家に納品してくださいません?
 貴方様のお名前とお店の名前、勿体つけずに教えてくださいな。
 私は警察の方にも知り合いがおりまして、その方も美味しいパンに目がないもので、貴方様のお名前を知らせて差し上げたいのです」

 途端におじさんの顔色が悪くなったのを、横目で確認出来たので、少し気分が良くなった。
 学生の私に警察の知り合いなんているわけがないのに、信じたのかしら。