だが、祖父がこういう人だから、孤児院のやる気のある子供達のお世話をしてくださるのでは、と期待したのも事実だ。
 その事について、まだお願い出来てはいないが、サーラさんがあの話をどう受け取って、どう返事をしてくれるのかもわからない。



 来週、私は差し出してくれるクララの手を、握り返すことが出来る?

 こんな思いをするのなら、シドニーの正体なんて教えてくれなければ良かったのに。


 ◇◇◇


「先週から出してくださるランチが変わったの」


 メリッサが嬉しそうに話してくれる。
 研修2回目までは、ホテルのレストランからのお弁当だった。


「初めて聞く名前のお店なんだけれど……」


 それぞれの席について、配られたお弁当を食べて。
 化粧室へ行き、午後からの講習に備えてテキストを読んだり、珠に席が近い人とは少しだけ話をした。


 だけど、先週からはランチの時間が変わった。
 ランチは皆で取り分けて、感想を言い合って。
 6人全員でお化粧を直しに行った。
 直ぐには会議室に戻らずに、鏡を見ながら並んで話をした。


「明日もそうだったら、嬉しいな」


 メリッサの笑顔を見る私も嬉しい。 
 前回では、2年生の途中で辞めて領地へ戻ったメリッサだった。
 もし今回、戻らずに済むのなら。


 卒業後に会う時は、貴女のお薦めのお店で夕食をシェアして、ダンスホールへ繰り出そう。