そう貴方がアマと呼んだのは、ね。
 貴族のご令嬢には見えないだろうから無理もないけれど。


 おじさんがパピーの襟元からそっと手を離したので、すかさず私の方へ引き寄せたが、もうおじさんはそれを見ているだけだ。


 でも、もうこれで充分ね。
 余りやり過ぎると、鼻持ちならない貴族の小娘が、善良な働くおじさんを苛めているように見えてしまう。

 言う通り、パピーがおじさんの店からパンを盗んだのなら、貴方のお怒りは納得出来る。
 だけど、小さな子供相手にやり方が酷だ。


 パピーは見た目はともかく性格が可愛らしくて荒んだ私の心を癒してくれたけれど。
 多分街の浮浪児で、結局は警察に引き渡すしかないのかも知れない。
 だけど、泥棒として付き出すのはやめて欲しかった。
 警察には私が、これから迷子として連れて行く。


「この子が盗んだパンの料金は、私が支払います。
 金額はおいくらになりますか?」


 私は自分の身分とお金で、この状況を解決しようと考えた。

 私が持っている、おじさんに対抗出来るカードはそれしかないから。