「3丁目の角の倉庫を改装して計画されているのは聞いていたが、ダンスホールは著しく風俗を乱す、と頓挫する噂もあったがな」

「大勢の警備員を近隣にも配置して、入場チェックやドレスコードもあって、新しい社交場として富裕層で連夜大盛況ですよ」

「3年先取りするくらいでは大きく儲けはないと思っていたが、その」

「駄目ですよ、余分にお金儲けしようとされるのは。
 神のお怒りに触れます。
 それで話を戻しますね」


 ビジネスに繋げたい祖父をいなして、話を続ける。
 祖父の言う通り3年先取りするくらいでは、大した儲けは出ない。
 ビッグプロジェクトは5年から10年以上先まで決まっているからだ。
 私が出来るのは、ちょっとした情報の手助けだけ。


「研修中のドアガール達のランチを、それらのお店から6品配達はどうですか?
 有名店はガイドブックに既に掲載されていますし、到着した夜と出立する前夜に食べに行くのはいいですが……
 ドアガールが紹介するなら、これからのお店の方が価値があると思うんです」

「6品をひとりずつ食べさせて、お薦めを決めさせるのか?」

「いえ、1品を少しずつ、6人でシェアします。
 男性には無理かも知れませんが、若い女性は個別の食器さえ用意されていれば、取り分けることを拒否しないと思われます。
 1品だけを食べるより、全部の試食が出来るのは魅力的ですし。
 皆で同じ料理を食べるので、連帯感が生まれます」


 無意識に自分を卑下してしまうメリッサが、ランチタイムに年上のお姉様方と打ち解けられたらいいな、と思った。