『引っ込んでろよ』と言われて、おとなしくパピーが連れていかれるのを見ているだけのつもりはない。

 今夜の私はあのふたりへのモヤモヤが燻り続けていて、好戦的なテンションになりつつあった。
 結構言いたいことは言えたような気がしているけれど。
 あれだけでは、まだまだ言い足りない。 
 やっぱりもっと理詰めで、こんこんと攻めるべきだった。


 それとは何の関係もないおじさんには申し訳ないけれど、不機嫌な私に向かって、アマなんて言った貴方が悪いのよ?
 八つ当たりしたい私も、性格が悪いけどね!


「私、ジェラルディン・キャンベル・クレイトンと申しますの。
 貴方様のお名前を伺っても?」

 ファミリーネームに続く地名は、そこを領地とする貴族の証だ。
 かつて観た劇に登場した高飛車な悪役令嬢はありがちな感じだったが、彼女をイメージしながら見下すようにおじさんに名前を尋ねた。


「……お嬢さんは貴族階級の?」