「なんだぁ、あんた!
 このガキの知り合いか?」

「知り合いではないですけど、どうしてこんな小さい子に乱暴するんですか!」

「ほっとけ!このアマがっ!
 関係ないなら、すっこんでな!」


 これまでの人生で初めてアマと口汚く罵られて、カッとなってしまった。
 私は生まれながらの伯爵令嬢ではないが、人様から怒鳴り付けられたことなどない。

 この子がどんなことをして、おじさんに捕まって荒々しく揺さぶられなければならないのか、何となく想像はついたけれど、絶対にパピーをこの男から助けてあげる、と決心した。


 口に出さずともそれが伝わったのか、おじさんは間に入った私を睨みつけながら、乱暴に突き飛ばしたので。


「いったーい!痛いーぃ!」と私は声を張り上げた。

 全然痛くなどなかったが、出来るだけ大きく、はっきりと。
 人がたくさん集まるように。