このふたりは、既に信者だと確信する。
 そして大人の女性達は顔を見合わせた。
 母の名前を出せば、それ以上言えないのは分かっていた。


「でも、お姉ちゃん、こんなに立派な馬車初めてだよ。
 モニカお嬢様はお馬が一頭だけの馬車で来るから」 


 さっきの女の子が私に言う。
 私がお姉ちゃんで、モニカはお嬢様か。
 いいんだ、これからは領民が身近に思える伯爵家を目指す私には、それが丁度いい。


「いつも、モニカが乗ってるのはこれだよ。
 だから、お迎えもこれに乗ってきたの」

「嘘つき!」

 私と女の子の会話に口を挟んできたのは、怒っていた片割れだった。


「お嬢様は、そんな贅沢はしないからな!」

「君は可笑しなことを言うね?
 ウチには2頭の馬が居て、この通り馬車もあるの。
 御者さんだって、いつもの荷馬車と同じ人でしょう?
 特別にお金をかけて馬車に乗ってきたんじゃないの。
 それがどうして贅沢になるの?」

「……」

「ついでに教えておいてあげるね。
 来年になったら、ウチは車を購入するの。
 それはモニカがお願いしたからよ。
 王都の最新の物が大好きなモニカがね」



 それはクレイトンで初めての車だった。
 母が車の購入を決めたのは、私が勧めたんじゃない。
 モニカにねだられたからだった。