やだな、涙が出てきちゃった。
 予定より早過ぎる。
 早くキャブを捕まえて、帰らなきゃ……


 シドニーとモニカと。
 それぞれと過ごした時間の記憶を辿ると、どうしようもなく想いが溢れる。


 モニカは私や両親を恨みに思っていたのかも知れないけれど。
 私は美人で優しい自慢の従姉が好きだった。
 あんな本音を聞かされなければ、私はいっぱい泣いたとしても、最後には大好きなふたりを祝福出来たのに。


 涙をこぼしたくなくて、夜空を見上げた。

 お月様が滲んで見えて…その瞬間だった。
 何かが、私の腹部を直撃した。
 思わず、自分でも信じられない声が出た。


「おっ、ぐっおおっ!」


 いきなり見えていなかった何かが私のお腹を直撃して、哀しみの伯爵令嬢らしくない声が出た。
 誰かにお腹を殴られたのだと思った。
 突然に襲われた痛みに、私は唸って耐えきれずしゃがみこんだ。