ふたりと王都の様子等、少しだけ話をしていたら、両親が現れた。
 田舎の伯爵夫妻は腰が軽くて、娘の帰宅を玄関先まで迎え出てくれる。
 このような重々しさのないところが、モニカの目にはどう映っていたのだろう。


「ジェリー! よく帰ってきた!」

 何度でも言う、この家を出てたった1週間だ。
 だが父は満面の笑顔で私を熱烈歓迎してくれる。


 さて。
 限られた滞在時間を無駄には出来ない。
 当たり前のことだけれど、朝早くに王都を出ても午後のお茶の時間に到着となるのが精一杯だ。
 寮からでは始発になど乗れない。

 また、帰りも寮で夕食を取るなら、クレイトンを午前中には出なくてはならず。
 私が母でも、不経済な真似をする娘を叱りたくなる。



 私は両親からお茶に誘われたがお断りして、モニカを孤児院まで迎えに行くことにした。


「丁度、リアンの授業も終わるからレディモリッツもお誘いしようと思ったのよ。
 貴女の好きなオレンジタルトも焼いたの。
 どうして急に孤児院なんて……」

「私は領内のことを何も知らないので、先ずは年齢が近いモニカ目線で、と思ったのです」


 高等学院に入学して、同じ立場の他の方達よりも自領のことを知らないのが恥ずかしくなりました。
 今更ですが、これから学んでいきたいのです。