モンドには幼い頃から荷馬車によく乗せて貰っていたから、気安い。
 ノックスヒルまでのんびりお喋りしながら帰るのもいい。


「……モニカは、今日は?」 

「モニカお嬢様は、孤児院へ慰問に行かれましたよ。
 いつもの第1土曜の恒例ですよ?」


 そうだった、モニカは毎月第1と第3土曜は孤児院と領内の小さな病院を慰問していた。
 その行為が聖女だと褒め称えられていたのだ。

 一方、聖女になれなかった私は、毎週土曜日はリアンと一緒に祖父が手配した外国人の家庭教師から、みっちり外国語を仕込まれていた。
 とても厳しい女性で、もちろん愛の鞭は振るわれなかったが、授業では一切この国の言葉の使用は禁止されていた。


「王都では車が増えていたわ。
 モンドは免許を取る気はない?
 貴方が取ってくれるなら、車の購入をお母様にお勧めしようと思ってる」


 実際に前回の母は私がお勧めしなくても、車を購入した。
 モンドは免許を持っていなくて、父に持たせるのが不安だった母は専属運転手を雇った。


 既に領地に居なかった私には馴染みがなかったけれど、その人はモニカお嬢様を大切にした。
 彼も匂わせで、何かを吹き込まれていたのだろう。
 モニカを守ってあげたかったのだ。


 教会の入口で、とり囲まれた領主家族を見殺しにする程に。