「直ぐに、ではないのですが。
 でも、出来るなら早めに……私もお仕事をご紹介していただきたいのです」

「ね、その口調は止めてね?
 シーズンズで働きたい?」

「……あのお店でなくてもいいの。
 貴女のご親戚がされているお店なら確かだし。
 ほら、私は田舎者でしょう。
 王都のことが何も分かっていないから、探すのを躊躇っていて」


 メリッサは初対面から自分を田舎者だと言った。
 だが伯爵家のご令嬢なのに?
 どうして学業の他に仕事を?


「驚かせてごめんなさい。
 あのね……」


 メリッサが語ったのは、領地での暮らしぶりだった。
 王城内に仕事が有り、王都にタウンハウスを構え、栄えている領地を与えられた高位貴族はともかく。
 普段は先祖代々地方のカントリーハウスに住み、社交シーズンだけ王都で賃貸メゾネットを借り、決して豊かではない領地経営に四苦八苦している地方貴族。

 クレイトンもそうだけれど、メリッサのご実家も同様だった。
 彼女は進学させて貰えたのだから、せめて仕送り額を減らせないか、と考えていたのだ。


 前回の私は何も知らなかった。
 メリッサの中退理由も軽く尋ねて、実家の都合だと言われたから、深掘りしなかった。