「もう、そいつに操を立てるつもりか?
 ジェリには年上の方が合うし、身内に弁護士が欲しいんだよ。
 まだ10歳の子供なんだろう?
 もう会いに行ったのか?」

「まさか、今日、この身になったところなんです。
 そんな余裕はありません」


 本当は……クレイトンも気になったが、10歳のオルに会いに行きたかった。
 決められた日まで会えないのは分かっていても、一目だけでも見たかった。
 だけど、10歳の自分が何処にいるのか、あの性格が悪いひとは教えてくれなかった。



 将来、オルを気に入って『じぃじ』と呼ぶことをゆるしているのを教えるのは止めた。
 天邪鬼な祖父はそれを聞いたら、絶対にじぃじとは呼ばせないだろうから。



 祖父が懐中時計を取り出して、時間を確認した。
 次の約束が迫っているのだ。

 そして、私に『2等席は駄目だ』と言いながら100ルア紙幣を3枚渡してくれた。
 200ルアで1等の往復チケットが買える。
 残り100ルアは寮からセントラル駅までのキャブの往復運賃と、お弁当代だと思う。




「どちらも潰すのは簡単だがな」


 潰す……モニカとシドニーのことだと思った。
 敢えて聞かせるようなその呟きは、私を試していた。